2023/02/28 17:23


Back to 80s& 90s憧れと希望は雑誌の中に。


先日、古書街神田に行ってきました。最近80年代の雑誌に魅了されさがして読んでいます。

グーグル検索で簡単に情報を得られる便利な近年、出かけるときには困りませんが、なんというか。なんか。ものたりないんです。

それは最近の雑誌などにも共通して思ったのですがすぐ読み終わってしまい、あまり印象に残らないのです。自分の欲しい情報はすぐ手に入りますが、それだけなのです。物足りなさの根幹は何なのか? 私はいったい何を欲しているのか?

ああ。80年代によく読んでいた雑誌のようなポエムチックな見出しだったり煽るようなキャッチコピーを欲しているのだと。


”部屋の中、ぬくぬくと。静かに静かに、時をすごしてゆきたい。”

”空と地面、花と緑、大きく背伸び、深呼吸。”

”手作り派なら一度は足を運びたい。”


雑誌OLIVEより。


この不思議感覚のキャッチコピー。商品説明など一切せず、言葉の浮遊感と写真でイメージを伝えるこの独特な言い回し。ファッションのこと、雑貨のこと、映画の中のインテリアのこと、アンティークのこと、手芸のこと、絵本のこと、おいしいお菓子さんのこと。ちょっとロマンティックでメルヘンチックな、非現実的で非日常的な世界がたくさん詰まった雑誌の、その世界観に浸りたくて何度も何度も読みたくなるのです。


雑誌の歴史を振り返ってみると面白く、誰がその本を編集しているかで内容も大きく違っています。

最初の女性雑誌は国木田独歩が編集長を務めた『婦人画報』が1905年に創刊したのが始まりとされています。1917年石川武美編集の『主婦の友』創刊や1920年野間清治編集の『婦人倶楽部』創刊など暮らしの知恵や女子教育と良妻賢母の手引き書のような実用雑誌が多くみられます。1936年に宇野千代が編集長を務めた『スタイル』創刊で和装や洋装のことなどを扱った雑誌が登場します。また同年洋装のことを扱った『装苑』が文化服装学園の出版局より創刊されます。女性の編集者によってようやく実用誌からファッション誌になっていきます。


60年代になると海外のブランドを紹介する『ハイファッション』や森英恵のブランドを紹介する『流行通信』などハイブランドの雑誌が創刊されるようになります。70年代に『anan』や『nonno』が創刊されるとデザイナーズブランドやメイク、恋愛や占い、デートや旅行など話題提供の発信源としての地位を確立していきます。この頃から80年代にかけて女性誌は百花繚乱を迎え赤文字系の『JJ』『vivi』『CanCan』など多くのファッション雑誌が創刊されます。


そして1982年に今までの実用的ファッション雑誌とは違うテイストの雑誌『オリーブ』が創刊されます。

80年代のオリーブは音楽や映画、インテリア、生活雑貨などを扱ったサブカルチャー雑誌の教祖というべき存在でした。90年代になるとその雰囲気は薄れ、より実用的なファッション誌になりますが唯一無二の雑誌であることに変わりはありませんでした。それもそのはず。83年頃のオリーブの編集を担当していた淀川美代子さんは淀川長治さんの姪っ子さんで幼い頃より叔父の影響をうけ映画と雑誌に囲まれて暮らしていたのです。80年代のオリーブが映画のワンシーンのようにキャッチーで独特な言葉遊びと世界観があるのもうなづけます。また80年代はサザビーやアフタヌーンティー、リビングプラス、オン・サンディーズ、オレンジハウス、F.O.B COOPなど手頃な値段で手に入る個性的な生活雑貨やさんが現れ始めた時でもありました。服だけではなく暮らしを自分らしく!という生活をスタイリングする雑誌オリーブはそんな雑貨たちとアンティークをうまくミックスし紹介してくれ、ページをめくるたびワクワクとさせてくれました。


映画と音楽と雑誌。好きなものはここから始まったのかもしれません。そんな理由で今再び、80年代の雑誌に夢中なのです。