2023/03/21 09:09


自宅で愉しむアガサ・クリスティーの世界。三幕の殺人。ポートワインを紐解く

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引退した舞台俳優が海辺の邸宅で催したパーティで、招かれた土地の牧師が食前酒のドライマティーニを飲んだとたんに急死した。招待客の一人だったポワロにも「事件」とは思われなかった。だが悲劇には第二幕が。今度は医師が、自宅で催したパーティの最中に、ポートワインを飲んで死んだ。出席者も、死の状況もまったく同じだったまったく同じような状況での同じような急死……灰色の脳細胞が活動を開始する。

『三幕の殺人』(原題:Three Act Tragedy) 1934年

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英国アンティークですごく小さいワイングラスをよく見かけます。それらはシェリーグラス、リキュールグラスなどの名前で販売されていて、日本でも旅館などで食事をすると小さな冷酒杯に食前酒として自家製の梅酒やゆず酒など振舞われる事があるので、ずっとこのシェリーグラスは食事の前に使うものだろうと思っていました。ですが、テーブルセッティングで白ワイン、赤ワイン、ウォーターゴブレットの三点をセッティングしてこの小さなミニグラスがセッティングされてる事があまりない事に気が付き、いったいこのグラスはいつ使うのか?謎でした。

その謎はポワロの作品『三幕の殺人』で解明されました。


アガサクリスティーが1934年に書いたこの作品はデヴィッド・スーシェ主演で2010年にドラマ化されています。
カクテル、ポートワイン、リキュールとアルコールに毒を入れてそれぞれ殺害されます。
薬の知識が豊富なアガサ・クリスティの小説には毒殺がよく用いられます。パーティやお茶会など大勢集まる場所での殺人が多いためかグラスやティーカップなどもよく登場するので、1930年頃を時代設定したポワロの作品は豪華なハウスパーティーの様子が伺え、テーブルの上にセッティングされたクリスタルグラスに眼が行きます。


ドラマでパーティーでディナーが終わった後、執事にチーズをもってくるよう促すシーンがありました。その時一緒に用意されていたお酒がポートワインでした。
食後にチーズと一緒に用意されたデカンタに移されたルビー色の美しいポートワインがシェリーグラスに注がれたシーンを見たとき嬉しくなりました。

そもそもお酒に詳しくないのでポートワインがよくわからなかったので調べてみることに。

世界3大酒精強化ワインの一つであるポルトガルで生まれたポートワインは濃厚な甘さと深いコクが特徴のワインで、イギリスの家庭で人気があり、塩気の強いブルーチーズ「ブルー・スティルトン」と合わせて頂くのが定番スタイルらしいです。

ポートワインの歴史は、ポルトガルで造られたワインを遥かイギリスまで運ぶには距離があり、腐敗の心配がありました。そこでアルコール発酵中にブランデーを添加することで鮮度を保つことができ、運ばれる間に芳醇なコクと甘みを醸し出したワインはブドウ果汁の甘みをそのまま残し、その濃厚な甘みが貴婦人の間で人気となり来客用に振舞われるお酒として食後のデザートワインとして今も親しまれているらしいです。

シェリー酒はスペイン、マルサラワインはイタリアの酒精強化ワインの事だそうです。そういえばイタリアのグラスメーカーRCRでもよくリキュールグラスをみかけます。お国が違えば飲み方も変わるしサービスの仕方も違います。


ドラマや映画など通して新しい発見があることはほんとに嬉しい事です。またそういった時代が違うものを手に取って楽しめるのもヴィンテージが与えてくれる大きな魅力のひとつです。Brocante307ではそんなグラスなども紹介していく予定です。


4月2日日曜日、有楽町国際フォーラムの大江戸骨董市で、たくさんのヴィンテージグラスや銀器、陶器など出品する予定です。

お散歩がてらどうぞ遊びにいらしていくださいませ。

ブロカント307では皆様の好きなもの探しのお手伝いが出来れば幸いです。



自宅で愉しむアガサ・クリスティーの世界